マンガの好きなシーン

 誰しもマンガにおいて好きなシーンがあると思う。たとえば主人公が新しい技をひらめく瞬間とか、苦境に立たされたあとの大逆転シーンとか、道で角を曲がったら食パンをくわえた綾波レイがぶつかってきたシーンとか、マチが念の糸をピンッ!って弾くシーンとか。しかし私はなぜか「食事をしているシーン」が好きで、しかも「練習などでヘトヘトになったキャラがものすごい勢いでおいしそうにガツガツ食べるシーン」が好きなのである。中でもちばてつや先生の『あした天気になあれ』で出てくる主人公でゴルファーのデブが食事するシーンや、ちばあきお先生の『キャプテン』で部員が猛特訓したあとで水を飲むシーン。極めつけは『賭博破戒録カイジ』で借金の肩代わりとして地下で働かされるカイジが、少ない初給料でビール4本と焼き鳥とポテチと肉ジャガを「うまっ・・!さいこう〜〜〜〜・・・!ひぃ〜〜〜ひぃ〜〜〜っ・・・!」って言いながら、はぐはぐ食べるシーン。(正確には「はぐ・・はぐ・・はぐ・・」)


 …これ以上の事実を打ち明けることは私の日記書きとしての選手生命に関わってくるだろうし、にわかには信じてもらえないかもしれないが、なんと私は「これらのマンガの食事シーンをおかずにしてご飯を食べる」ことがあるのだ。大学生時代は貧乏な一人暮らしで、過去何度も書いていますが一日の食事がベビースターラーメンの30円のほうだけだったり、お湯で煮た切り餅2個だったりと、伊集院光なら3日で餓死しそうなメニューだったのですが、空腹感も辛いけどなによりいつも同じ献立であることから発生する「味に飽きてしまう現象」にほとほと嫌気がさしていて、どうにかしてこいつらをおいしく頂く方法はないものか…という苦心の末に編み出されたのがこの「マンガのおいしそうに食事するシーンを見ながら自分も食事することでなんか気分的においしいような錯覚に陥る」戦法なのだ。「バラエティ番組の食べ物ロケとかじゃだめなの?」と思う方がいるかもしれませんが、あの人たちからは「空腹の末にやっとメシにありつけた…!」感が漂ってこないし、料理があまりにも高級だったりする場合、たとえば画面に写るステーキと手の平におかれた5粒のベビースターを見比べてるシーンを想像してみてください。おかずになるどころか逆に精神に致命傷を負います。

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 そこで思い出したのがこのDVD。

ボクといっしょに食べようよ、イーテぃン。LIGHTバージョン [DVD]

ボクといっしょに食べようよ、イーテぃン。LIGHTバージョン [DVD]

毎晩テレビを見ながら一人自分の部屋で食事をするのが寂しい、楽しいはずのバラエティ番組が逆により一層孤独感をかき立てる。そんなとき、もし、テレビ画面の中に、自分と同じように一人で食事をする人がいてくれたら…。そんな願望から生まれたDVD。決してじっくり鑑賞するためではなく、あくまでもBGVとして、誰かと食事をしている雰囲気を味わうのが目的。その日の食事内容や気分によって、18人の中から選んで再生する。


 早い話が、なにも喋らずにひたすら一人で食事する人間が写ったDVD。実はこのDVD、とある番組で紹介されていて実際に映像を見たことがあるんですが、ほんとにただ食べるだけの映像だった。これは違うんだよ…。ぜんぜんおいしそうに食べてないという問題の前に、これはあくまで一人でご飯を食べているときに感じる「孤独感」を救済するビデオであって、別にそっけないご飯がおいしく食べられるようなシロモノではない…。こんなのじゃなくて、朝から晩まで練習をやったあとの高校球児たちが旅館のご馳走をたいらげるシーンとか、綾波レイアメリカンサイズのビッグマックセットをもりもり食べてるシーンとかマチが念の糸でステーキをサイコロ状に切っていくシーンとかの方がよっぽど使えるわけ。要するにレイとマチなわけ。そこんとこ勘違いしないで。(この日記を書いてるおまえも)